つれづれBlog道

あまり多くを求めず、ほどほどの人生。「菜根譚」

「やがて消えゆく我が身なら」池田清彦 を読んで

10年以上前に執筆された書籍なので、若干タイムリーさには欠けますが、現在でも十分に読み応えのある内容です。

もうTVでもお馴染みの池田節炸裂ですが、私たち現代の日本人がいかに世間の常識というものに縛られ、固定概念に凝り固まっているか、そんな価値観を自然科学的・生物学的に色んな側面から見つめ直させてくれる良書です。

著者は、子供の頃から大好きな虫を追いかけ続け、それを極めて生物学の教授までなった、もっぱらの自由人です。

だから話の内容も大方、型にはまらず、しがらみも無い極めて自由な生き方の内容が多いのですが、多くの現代人はなかなかそんな生き方を送るのも難しく、勇気のいることかも知れません。

中でも現代医療に関して、様々な疑問を提示していますが、ガン治療なんかも高齢になってガンになるのは生き物である以上、自然界においては仕方の無いことで、無理に手術をするのはかえって寿命を縮めてしまう。
若いうちからこまめに健康診断を受け、様々な数値の増減に一喜一憂し、食品や生活習慣を制限することも果たして幸せと言えるのか。

生物学の検知からすると、寿命の長短というものは食物の他、遺伝的要素、環境、その個体が受けるストレス等、無数にある要素がそれぞれ複雑に関与しあって起きる結果なので特定の原因を見出だすことは、ほぼ不可能と言えます。

以前、長野県諏訪中央病院の元院長、鎌田 實 先生の著書、「がんばらない」も読んだが、無理な治療は患者の幸福にはならない、と私も読んでいて思いました。

ただ、一昔前は、こういった病を根治させるという事に重点をおいた医療でしたが、近年はそれよりも患者のクオリティ٠オブ٠ライフの維持向上に努める傾向が強く、池田先生や、鎌田先生たちの考え方が浸透してきたのかな、と思います。

好きなことを極めて自由に生きている著者の論説は、各専門分野からの異論・批判はあるにせよ、生き方として様々なヒントを得られると思います。